「山印(やまじるし)」とは各農家が様々な農産物を出荷する際、荷に印をつける出荷者名の略称のことであるが、市場ではヤマジルシを「荷印」と呼ぶのが一般的のようである。
東京の市場関係者間の言葉で「西山(にしやま)」という言葉があるが、これは東京の方から見て、西の方角にある生産地をさす呼び名であり、また農家を巡回して集荷することを「山まわり」と呼んでいる。
山印の語源もこの辺りの事情から発祥したものと思われる。この山印という呼び名がいつ頃から用いられたのかは不明だが、市場出荷の際に使ったことに限れば、農産物が市場で販売されてからということになり、農業生産が一定の軌道にのった明治の後期以降ということになる。
しかし、山印は市場出荷の印以外にも、「屋号」や「商標」のように使用されている場合もあり、多摩区や麻生区の農家の中には両用又は混用している例もある。
この場合には山印のなりたちも江戸時代にまで遡ることになる。市場出荷の時に山印は大きな役割を果たした。出荷者名が簡略化され、記録や表示、場内で出荷者名をよみ上げる際にも短時間で簡単に進行できた。
また、事務処理上の便利さだけではなく、長い歳月に渡り山印を使用してきたことにより、競人や仲買人等が荷を評価する基礎となり、生産農家の信用を表わす重要な役割を持つに至ったのである
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